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「斎王様、あの。
貝撒いてどうするんですか。
見つけて、歌を詠むんですか。
その歌で競うんですか」
既に準備を始めていると言うのに、現れた道雅が矢継ぎ早に文句を言ってきた。
貝合わせの貝は、本来は、鑑賞したり、それを題材にして、歌を詠んだりするためのものだからだ。
「今日は歌は詠まないの。
貝を探すの。
多く見つけた人が勝ちよ」
「そんなのなら、他のものでやったらどうですかっ」
うるさいなあ。
まあ、歌の師匠なんだから仕方ないけど、と思いながら、成子は几帳越しに道雅を見た。
そこから更に、命婦が道雅に言いつける。
「斎王様は、最初は、帝から御下賜いただいたお道具を撒こうとしていらしたんですよ」
やりそうだ、という目で道雅が見た。
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