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「ねぇ恵、萌ちゃんとアドレス交換したの?」
「うん。あの子、面白いね-。」
「・・・・・。」
出来れば、誰にも目の触れない場所に閉じこめてしまいたい。
そんなドロドロした感情から、葉月の表情は曇った。
どんなに遠ざけても自然と人の輪が広まってしまう。
「ねぇ、萌ちゃんのメールとか私に見せてくれる?」
「ん?いいよ。でも萌ちゃんが秘密にしたいって内容なのは駄目だからね。」
こういう所が恵らしいと思う。
なんの下心もないから、そう言えるのだろう。
でも、嫌なものは嫌。
自分だけを見て欲しいという気持ちは、恋人になっても強まるばかり。
「葉月、手。」
はい、と差し出された手と穏やかな笑顔。
泣きそうなくらい嬉しくなる。
「恵!大好き!」
ぎゅう!と手を握り、腕にしがみつき、溢れる思いをぶつければ、恵はにぱっと幼い笑みを浮かべた。
この表情が1番大好き。
他の誰にもみせない、私だけの笑顔。
「すきすきすきすき!」
私以外の人に心奪われないで。
私から離れないで。
そうお祈りをかけるように、何度も好きと伝えた。
「うん、私も好きだよ、葉月。」
恵は何度も好きと言わない。
けれど、その1回がとても大きい。
ここが外でなければ、キスしたかったのに。
「葉月、今、誰もいないよ?」
これは意思疎通した?恵もキスしたいと思った?
くいっと指で上げられた顎は期待で満ちあふれた唇を突き出させる。
恵からの貴重なキスを、しっかりゆっくり堪能した葉月は、すっかり浄化されたように活き活きと輝いていた。
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