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俺はその日の夜、タカオのアパートを後にした後、二人で食事を取り、電車で帰ることにした。
俺は、電車が来るまでの時間、タカオと雑談をしていた。
「そう言えばさ、この駅に着く前に、電光掲示板に「次は、オマエダ」って書いてあってちょっとびっくりしたよ。」
とタカオに言うと、タカオは笑いながら言った。
「だろ?あれって絶対に狙ってカタカナだよな?別に漢字で、「次は、小前田」でもいいわけじゃん?」
俺たちがそんな雑談をしていたら、電車が来た。
「じゃあな、また連絡するから。」
俺はタカオに手を振り、電車に乗り込んだ。
タカオは笑顔で俺に手を振る。こんな日がまた来るなんて思わなかった。俺は安堵したのか、座席に座ると少しウトウトしてしまった。
目が覚めて、俺はしまった、乗り過ごしたか、と思った。今、どこを走っているんだろう。俺は少し不安になった。
すると車内アナウンスで、
「この電車は、終点、カエラズまで止まりません。」
と言ったのだ。
え?これって快速だっけ?しまった!カエラズってどこだよ。初めて聞く駅名だ。乗り間違えたか?俺は慌てて、スマホで検索をした。無い。そんな駅名は無かった。嘘だろう?検索で駅名がヒットしないとか在り得ないだろ。俺は仕方なく、タカオの電話番号に電話した。
「え?駅名が見つからない?そんなバカな。ちゃんと調べたのか?俺もカエラズなんて駅は知らないぞ?聞き間違いじゃないのか?」
タカオはそう言った。前に座っていた老女が俺をジロリと睨んだ。そっか、ここ電車だった。俺は早々に電話を切り、そこからはメールでタカオとやり取りをした。
「車内に誰かいないのか?カエラズってどこか聞いてみろよ。そこからどうやったらお前んちの近くの駅に行けるか知ってるかもしれないぜ?」
俺は、タカオからのメール通り、先程睨まれた老女に聞いてみることにした。
「あのう、すみません。カエラズってどこなんですか?そこからどうやったら東京まで帰れます?」
老女は虚ろな目で俺を不思議そうに見つめた。
「帰れないよ、あんた。カエラズって言ってるだろ?」
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