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ボケてる。話にならない。
俺は少し離れて座っているサラリーマンに聞いてみた。
「カエラズ駅からどうやったら東京まで帰れます?そこからどこ行きの電車に乗ったらいいんでしょう?」
「わからない。そんなことは終点で聞いてくれ。」
こちらも虚ろな目でそう言う。なんなんだ、この車両は。まともな人間は乗ってないのか。俺はあたりをキョロキョロ見回した。
それにしても変だ。いくら田舎とはいえ、この人の少なさは異常だろう。
俺は他の車両も捜したが、どうやら乗客はあの二人だけらしい。
俺はもう一度、タカオにメールした。
「ボケた婆さんと、変なサラリーマンしか乗ってなくて、詳しいことがわからない。」
すると、すぐに返信が来た。
「じゃあ、車掌に聞いてみる?先頭車両のところに居るだろ。」
俺は先頭車両まで歩いて、車掌室まで行った。車掌室をノックしてみた。
返事が無い。ほかの車両をまわってるのだろうか。
仕方なく、俺は先頭車両からずっと歩いて、最後尾まで行ったが車掌と全く会わない。
車掌何してるんだ。
「車掌が居ない。車掌室もカーテンがしてあって、中の様子は見えない。」
俺がメールをすると、タカオから返信が来た。
「じゃあ、仕方ないから終点まで行くしかねえな。どうせ、止まらないんだろ?」
俺は諦めの溜息をついた。やれやれ、ちゃんと帰れるんだろうか、俺。
不安な気持ちのまま、俺は終点まで座席に座っていた。
あのボケた婆さんが口の中でぶつぶつ何事か言っている。
何なんだ。よく聞いてみると、読経のようだ。
なんだよ、気持ち悪いな。俺は、早く終点に着くことを願った。
電車のスピードが落ちて行き、車窓から看板らしきものが見えてきた。
「不帰」
これでカエラズと読むのか。なんだか、縁起悪い。
俺は見たことも無い駅に着いた。
俺が席を立つと、老女とサラリーマンも降りようと席を立つ。
老女は、自分の横にある杖を掴もうとするが、つかめないようだ。
世話がやけるなあ。俺はそう思いながら老女を助けてやろうと近づいたのだ。
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