第1章

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それから数ヶ月、僕はその嫌な記憶を忘れるために仕事に打ち込んだ。 彼女はその男のことを話さないし、僕も聞かなかった。 ある日、上司に呼び出された。 昇進の辞令をもらった。 当然、給料も多くなる。 彼女もきっと喜んでくれるだろう。 そう思って僕は有頂天になっていた。 それで僕は大切なことを忘れてしまった。 忘れてはいけないことを忘れてしまっていたんだ。 僕は次の日の朝、いつものように駅に現れた彼女に向かって、会社で昇進したことを告げた。 いつもは無口な彼女もこの時ばかりは返事をしてくれた。
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