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「なあなあ貸してくれるの? なあなあ!」
「ちょッ、纏わり付くなってッ……モト、今、断っただろ」
「断ってねぇよ! 舎弟は認めてねぇけど、アンタの自転車の腕は認めたし! なあなあ、さっきの話! ケイ、ケイ先輩!」
「……ケイ先輩って」
今更。お前、今更。
「おい、ケイ。モト。その話は」
「オレ、ゲーム大好きなんだって! 金ねぇから買えねぇけど、ゲーム大好きなんだって!」
「大好きっつーのは分かったけど、今」
「断ってねぇって! 先輩の意地悪!」
男の脹れ面に俺は萌えないからなモト。
「おい……ケイ、モト」
「なあー今貸してくれるって言ったよな。な」
「うわっつ、ゆ、揺らすなって! チャリ倒れるだろ!」
「テメェぇええ等、俺をシカトしてんじゃねえ! ゲームの話はゲーセンでしやがれ! モト、邪魔だ! ケイ、さっさと出せ!」
ヨウの怒りにモトはサッとチャリから退き、俺は素早くペダルを漕ぎ始める。
怒られた。不良からッ、舎兄から怒られた。やっぱ不良恐ぇえええって!
ビビる俺を余所にモトはヨウの怒りよりも、ゲームを貸してくれるかどうかの方が気になるらしく「ゲーセンで話そうな! センパーイ!」後ろから声を掛けてきた。
モトって調子がイイっつーか、ご都合主義者だろ! 先輩とか、どの口がそんなこと言っているんだ?
俺達の様子にワタルさんの笑い声が、シズの欠伸が聞こえた。
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