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俺は鞄から小銭入れを出して200円をココロの手に押し付けた。
「サイダー。ペットボトルで宜しくな」
「え。あ……は、はい!」
「じゃあ、俺も同じのな」
いつの間にやって来たのか、ヨウが五百円玉をココロの手の平に落とした。
パァと顔を明るくしてココロは小銭を握り締めると、小走りで階段に向かって行った。
可愛らしいよな。ああいう顔をする女の子。見ていてほのぼのしちまう……そう思うのは男として普通だぞ? 俺は断じて変態じゃない。
ココロの背を見送った後、ヨウに目をやる。
「エアホッケーはいいのか?」
「休憩だ。ワタルとしていたら、体力消耗しちまった」
「ワタルさん強いもんなぁ」
「俺ほどじゃねえけどな」
その自信、是非俺にも分けて欲しいぜ。断言できるヨウに羨ましさを感じた。
「ハジメがあの程度の怪我で済んだのは、あの時俺を追い駆けてきたケイ、テメェのおかげだ」
突然の言葉に、俺は目を皿にしてヨウを見る。ヨウは目を細めて試合を眺めていた。遠回し礼を言っていることが分かった。
仲間思い、ワタルさんはヨウのことをそう言っていた。
本当にそう思うよ。じゃないとこんな風に遠回し遠回し礼なんか言ってこないだろ。
義理や人情を大切にする不良だとは思っていたけど、ホント大切にする奴だよな。
俺も試合に目を向け、そっと口を開いた。
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