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「でも」
玲也くんがズイッと私の方に寄ってきた。
「!」
「…俺は男だし、恋愛経験もないから、ただの直感だけど。何となくわかるんだよ…美玖が、まだ舜のこと想っているってことくらい」
そんなことない。
すぐに否定できなかったのは、脳裏に舜のことがよぎることがあるからだった。
玲也くんの瞳に、私の戸惑った顔が写っている。
「…でも今は」
「わかってるよ。舜のこと忘れてなくてもいいって言ったのも俺だよ。でも…」
玲也くんが俯いた。
舜のこと、忘れなきゃ。
そう思ったときだった。
「ごめん、美玖」
トン、と肩を押された。折り畳み式のテーブルから身を乗り出した玲也くんが、私の肩を掴んでいた。
「…玲也くん?」
玲也くんの足が当たって、テーブルが私の方に倒れてくる。
テーブルの下敷きになって足が痛い筈なのに、頭の中が真っ白で、痛みはほとんど感じなかった。
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