★SIX★

16/17
58人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
「こうやって、二人で出かけるの、久々だよな」 舜が沈黙を破って言った。 傍を車が通り過ぎていく。 「…そうだね」 「美玖はさ、玲也のことまだ好きなの?」 舜に聞かれ、私は足を止めた。 そう聞かれると、よくわからなかった。 私が好きなのが、舜なのか、玲也くんなのか。 言ってしまえば、“どちらも好き”という最低の答えしか出ない。 「…わかんない」 私は答えた。 でも、一つ言えるのは、舜のことがまだ好きだと言うこと。 「俺のこと、まだ好き?…なんつって。こんなこと聞くなんて、どうかしてるよな」 舜がアハハと誤魔化し笑いをする。 「…私、玲也くんと付き合っているときに、何かあるたびに、舜のこと想いだしちゃって、玲也くんのこと傷つけちゃったんだ」 LINEを開いた。 暗い中、スマホの画面がやけに明るい。 玲也くんが今朝、送ってきたLINEの中に、こんなメッセージがある。 “君が、舜のことを忘れられないこと、わかってる。だって君はまだ、舜のことが好きなんだから。” 「…たぶん、私はまだ、舜のことを忘れられてない…」 何言ってんだろ。 何がしたいんだろ。 別れを告げたのは私の方なのに。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!