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家には案の定誰もいなかった。
「…そういえば、玲也くん、進路のことで何か悩んでるの?」
私が聞くと、玲也くんは「え?」と目を瞬かせた。
「何か、奈々ちゃんに進路のこと聞かれたとき、何か悩んでいるように見えたから」
違ったらごめんね。
私が言うと、玲也くんはフッと小さく笑った。
「…参ったなぁ。気付かれてたか」
やっぱり、悩んでたんだ。
私は驚いた。
それと同時に、付き合いの長さを実感した。
「何かあったの?」
「実は俺、バスケ部をやめるよう、父さんに言われていたんだ。でも、どうしてもバスケをしたいって言い続けてた。結局、バスケ部を引退したらすぐに勉強漬けの毎日になるのを条件に、バスケ部に居続けてるんだけど」
玲也くんが頭を掻いた。
部屋に入ってからも、ずっと小声で「いやぁー、気付かれてたなんて、参った参った」と呟いている。
「でも、勉強漬け…って…」
「俺の家、親が親なもんだから、勉強には厳しくて。受験も、親が出たのと同じ国公立の大学に行くよう言われてるんだ」
そういえば、去年も…塾に夜9時から通っているという話を聞いたっけ。
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