第1章

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「えっと、夏休みが始まってからだから、 三日後からです。あの、麗子さん」 「何?」 「ここって友達とか連れてきたらダメですよね?」 「あら、いいわよ」 「い、いいんですか?」 「別に世間に隠してるわけじゃないしねえ」 麗子がそう言うと霧山冴子が口を挟んだ。 「でも、ここにいる人たちって皆、 世捨て人か仙人みたいな人ばかりだから、 一十三さんの様な若い人にとっては、 あまり面白くはないと思いますよ」 「いや、そんな事を言ってはいかん」深見玄秋が釘をさす。 「年代を超えた交流こそ、実のある時間になるというもんだ」 「玄秋さんはただ、若くて可愛い女の子と喋りたいだけでしょ?」 と神田美鈴が冷やかす。 「そうとも言うな」と玄秋も否定しない。 「でも同年代の子が増えると楽しいだろうなあ」 と霧山冴子は嬉しそうだ。 「そろそろ時間です。私は一十三さんを送っていきます」 麗子がピシャッと切り上げる。 「さ、一十三さん。行きましょう」 こうして一十三の職場見学は終わった。   表に出ると、いつの間にかリムジンが到着している。 麗子と一十三はリムジンに乗り、元来た道を走りだす。 「三日後、この車で一十三さんの家まで迎えに行きますから」 「迎えに来てくださるんですか?」 「交通費も莫迦にならないし、ここは電車もバスも無いからね」 「ええ、助かります」 (でも、どうしてこんなに至れり尽せりなのかな?) 「知りたい?」 「あ、はい・・・ええっ?!」 「あ、御免御免。つい他心通力使っちゃった」 「やっぱり!」 「あのね。あなたは待ち望んでいた人だからよ」 「はあ?」 「特練棟にはね。十年前まで焔雹という物凄い霊能力者がいたの」 「へえ。かっこいい名前ですね。ん?ほむらって、まさか!?」 「そ。焔院長のお兄さんなの。双子のね。 因みに院長も優れた霊能力者よ」 「ああ、そんな感じしました。だからかあ」 「ところが、何がきっかけだったのか、雹さんは狂ってしまったの」 「狂った?」 「人を殺す快感に目覚めてしまったのかなあ? ・・・世界最強の殺し屋になっちゃったの」 「なっちゃったのって、何か言い方が軽いっすねえ」 「こういう重い話程、軽く話した方がいいのよ」 「な、成程」 「で、何人もの人達が、雹さんを止めようとしたんだけど、 皆、殺されちゃって」 「・・・重いっすねえ」
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