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「えっと、夏休みが始まってからだから、
三日後からです。あの、麗子さん」
「何?」
「ここって友達とか連れてきたらダメですよね?」
「あら、いいわよ」
「い、いいんですか?」
「別に世間に隠してるわけじゃないしねえ」
麗子がそう言うと霧山冴子が口を挟んだ。
「でも、ここにいる人たちって皆、
世捨て人か仙人みたいな人ばかりだから、
一十三さんの様な若い人にとっては、
あまり面白くはないと思いますよ」
「いや、そんな事を言ってはいかん」深見玄秋が釘をさす。
「年代を超えた交流こそ、実のある時間になるというもんだ」
「玄秋さんはただ、若くて可愛い女の子と喋りたいだけでしょ?」
と神田美鈴が冷やかす。
「そうとも言うな」と玄秋も否定しない。
「でも同年代の子が増えると楽しいだろうなあ」
と霧山冴子は嬉しそうだ。
「そろそろ時間です。私は一十三さんを送っていきます」
麗子がピシャッと切り上げる。
「さ、一十三さん。行きましょう」
こうして一十三の職場見学は終わった。
表に出ると、いつの間にかリムジンが到着している。
麗子と一十三はリムジンに乗り、元来た道を走りだす。
「三日後、この車で一十三さんの家まで迎えに行きますから」
「迎えに来てくださるんですか?」
「交通費も莫迦にならないし、ここは電車もバスも無いからね」
「ええ、助かります」
(でも、どうしてこんなに至れり尽せりなのかな?)
「知りたい?」
「あ、はい・・・ええっ?!」
「あ、御免御免。つい他心通力使っちゃった」
「やっぱり!」
「あのね。あなたは待ち望んでいた人だからよ」
「はあ?」
「特練棟にはね。十年前まで焔雹という物凄い霊能力者がいたの」
「へえ。かっこいい名前ですね。ん?ほむらって、まさか!?」
「そ。焔院長のお兄さんなの。双子のね。
因みに院長も優れた霊能力者よ」
「ああ、そんな感じしました。だからかあ」
「ところが、何がきっかけだったのか、雹さんは狂ってしまったの」
「狂った?」
「人を殺す快感に目覚めてしまったのかなあ?
・・・世界最強の殺し屋になっちゃったの」
「なっちゃったのって、何か言い方が軽いっすねえ」
「こういう重い話程、軽く話した方がいいのよ」
「な、成程」
「で、何人もの人達が、雹さんを止めようとしたんだけど、
皆、殺されちゃって」
「・・・重いっすねえ」
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