第1章

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「さあな。奴が毒に詳しい事。 殺した奴の死体が発見されんから事件にならん事。 依頼者に殺した奴の目玉が送られてくる事。 奴に関して、わしが知っているのはそれだけだ」 「目玉、ですか?」 「ああ。だから、事前に殺したい奴の毛か何かを 入手しておく様に言われる。 後でDNA鑑定して、殺した証拠にするんだ」 「成程」その後、一時の静寂があり、また黒崎が沈黙を破る。 「生体反応があるんだ」 「え?」 「その目玉が、だ」 「じゃあ・・・」 「流石医者だな。すぐに意味が判るか」 「はい。その殺された人間達は」 「うむ」 「生きたまま目玉をえぐられた、という事ですね」 「そういう事だ」 黒崎が御猪口の日本酒を一気にあおった。 「拷問には一番いいね」 それまで黙って聞いていた周龍が口を開いた。 「なぜだ?」黒崎が興味深く訊く。 「体で一番痛覚多いよ。あと、一番恐怖を感じるね」 周龍が微笑んでそう言うと、三人はその後、一言も話さなくなった。  そして数日後。 「御苦労だった」 黒崎は、テーブルの上に置かれた小さな黒い箱の中の、 李王の目玉を見ながら、電話の相手『雹』と話をしていた。 「よく、護衛の二人を倒せたな。武術の達人だったそうだが」 「そんな事はどうでもいい。護衛一人につき一千万、 ボス一人で三千万。合計で五千万だ。 いつもの口座に振り込んでくれ」 「分かった。間違いなく振り込もう」 黒崎がそう言うと、電話が切れる。 「愛想の無い野郎だ」黒崎はニヤリと笑い、受話器を置いた。
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