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あれから1週間経つが、俺の心は荒むばかりだ。
健志の結婚式の招待状が友人達に既に届いていると分かったのだ。
知らなかったのは俺だけ。
多分、こんな酷い仕打ちも俺の人生でトップに入る事だろう。
俺は泣きながら店長に尋ねる。
「俺、あいつに恨まれるような事したかな?
だってこんなの、あり得ねえよ。」
「いいや、将平くんは悪くない。」
店長が、俺を優しく宥めてくれる。
「ただ、彼は堅実な生き方を求めたんだろうね。」
ゲイの秋吉さんの言う事だから納得が行く。
でも頭では分かっても、俺の涙は止まらない。
健志が好きだった。
今でも好きだ。
彼の幸せを俺は望んでいる。
…だけど、それじゃ残された俺は?
俺は正気を保てなくて、結局、店長の家に上がり込んだ。
同棲している慶介(けいすけ)さんに迷惑を掛けると分かっていても、1人ではいられなかった。
信じられない事に、朝目覚めると、床に敷かれた布団に川の字になって寝ていた。
俺を真ん中にして右に慶介さん、左に店長。
きっと俺は昨晩、2人の前で大泣きしたんだろう。
恥ずかしくて起きるタイミングを計りながらモゾモゾ体を動かしていると、隣に寝ていた慶介さんが唐突に言った。
「泣き止んだか、将平ちゃん。」
いつもは『ちゃん』付けで呼んだりしない。
俺は顔が火照るのを感じ、慌てて布団を頭から被る。
すると、店長も起きていたらしく、隣でクスクス笑った。
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