6.

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羞恥の気持ちが押し寄せるのと同時に、彼女達が平気で洗濯出来るのが不思議だった。 荒潟は、恋人がいない、と俺に言っていたから、エレナもユカも彼の女友達でカノ女ではない。 つまり、カレ氏でもない男とその知人の下着を洗ったのだ。 …女の子って、普通は嫌がるものじゃないのか? しかし荒潟は、まるで風に棚引く鯉のぼりでも見るように、清々しい表情でこの光景を見ていた。 そうなると、俺も自分の常識で考えるのが馬鹿馬鹿しくなり、彼と同じように腰に手を当て、並んでそれを眺めた。 荒潟と俺は2人で朝食を作って食べたあと、仕事に出掛けた。 依頼主は3階建ての小さなビルのオーナーで、人の良さそうな中年の男だった。 建物は古く、北側の壁面には開閉出来ない嵌め込み窓が並んでいて、酷く汚れていた。 「この窓のせいで、ビルの片側の部屋だけ借り手が付かなくてね。」 オーナーが頭を掻きながら言い、俺達をビルの中に案内する。 エレベーターに乗って3階まで行き、そこから非常階段を上って屋上に出た。 屋上には清掃道具やブランコが用意されていたが、俺はやっぱり持参したスクイジー(ゴム製ワイパー)や安全帯を使う事にした。
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