6.

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荒潟には1階に下りて貰い、俺が窓拭きをしている間、通行人が壁面に近付かないように誘導を頼んだ。 万が一、道具が落下したり、洗剤の飛沫が飛んだ時に、下に人がいたら被害に遭ってしまうからだ。 高所恐怖症の荒潟が屋上に留まれるはずもなく、彼はいそいそと階段を下りて行った。 しかし、荒潟は地上にいながら俺より緊張した様子だった。 上を見上げては、ブランコで宙吊りになって作業している俺の姿を確認し、目眩でも起こしたかのようによろけた後、大きな溜め息をつく。 彼には悪いが、俺はおかしくて堪らない。 俺は15階建てのビルの屋上からゴンドラに乗ってガラス清掃を行った経験もある。 だからこんな高さの窓拭きなんて、俺には高所作業にさえ入らない。 鼻歌を口ずさむくらい余裕があるが、下を見ると荒潟と目が合い、彼の顔が強張っているのを見て、また笑いが込み上げた。 正午過ぎに作業は終わり、俺と荒潟は飯を食いに行った。 俺の希望でジェイムのカレー屋に行く事になったのだが、荒潟は全く気乗りしない様子だった。 そして店に着いてからも、彼は機嫌が悪かった。
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