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俺は自分の容姿にコンプレックスがある。
しかも、目の前にいる男に同い年と言われ、歴然とした差に恥ずかしさが募り、顔から火が出そうだった。
「すみません。帰ります。」
俺が車に向かおうとすると、荒潟が大声で呼び止めた。
「何で謝んの?」
驚いて立ち止まる俺に、彼は近付いて来て言った。
「謝るのは俺の方だから。
犬、放してごめん。
犬好きのツツミさんだから大丈夫だったけど、小さな子供や年寄りだったら怪我してたかもしれない。」
俺は少しばかり恐縮しつつ、しかし訂正を2つ入れる事にした。
「俺の苗字、ツツミじゃなくてツツウミです。
それから、特に犬好きじゃないです。」
すると荒潟は、俺を上から見下ろして言った。
「将平さん、犬好きじゃないなら、犬の方から好かれる性質(たち)なんだな。」
俺は返事に詰まる。
犬は決して苦手ではない。
ただ、今まで一度もペットを飼った経験が無いから、相性の良さなど俺には分からない。
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