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俺のやる気の無さに、同じ営業の黒木が背後からぽんと肩を叩いて囁く。
「筒海さん、元気出して下さいよ~。
借金は肩代わり出来ませんけど、失恋したなら合コンのセッティングしますから。」
「…うん。
その内、頼むかな。」
俺は取り繕う気力も無くて、パソコンの画面を見ながら適当に答えた。
すると、黒木が真面目な声音で言う。
「何か俺に出来る事があったら…。」
俺は驚いて振り返った。
「え?急に何だよ?」
「こんなに元気の無い筒海さん、初めて見たんで…。」
俺は明るいだけが取り柄のような男だ。
この会社、『アオイ・クリーンサービス』に勤めたのは中学を卒業して直ぐで、そのまま転職もせずに今に至る。
そして1年前に現場から営業に移り、何度も失敗を経験したが、落ち込んだ姿だけは誰にも見せなかった。
その俺が、バーで管を巻いて店長に泣き付き、挙げ句の果てに同僚にまで気を遣われるなんて。
何もかもどうでも良くなるくらい、心は傷付いてボロボロだ。
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