1494人が本棚に入れています
本棚に追加
「筒海さん…。」
黒木が心配そうに俺を見る。
それで俺は、同じ迷惑を掛けるなら最小限に止めようと決意して言った。
「黒木、俺の夏休み、ちょっと前倒ししていいかな?」
『アオイ・クリーンサービス』は名前の通り清掃会社で、正月以外休みがない。
小さな会社だから、夏季休暇は交代で有給を取らなければならず、同じ部署の人間同士で相談して決めていた。
大抵は、お盆を挟んで前後に分ける形で休暇を取るのだが、まだ7月後半だと言うのに、俺は初めて1週間の休みを申請した。
普通なら、突然の長期休暇に正当な理由を求められるはずだった。
しかし上司も同僚も、追及せずに了承してくれた。
誰が見ても、俺は普通じゃなかったんだろう。
「ゆっくり休め。」
と社長に言われた時、俺は自分が情けなくなったが、惨めな姿を素直に認めた。
このまま我武者羅に仕事をしても、ミスするのは目に見えている。
それなら1週間、落ち込むだけ落ち込んで、全てを吹っ切って日常に戻ろう、そう思った。
この選択が、俺の濃厚な1週間の始まりとなった。
最初のコメントを投稿しよう!