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物にも人にも、あまり執着の無い俺。 でも、唯一のめり込んでいた恋人に、突然振られた。 仕事帰り、俺は馴染みのバー『ジョーズ』で管を撒く。 初めてここを訪れた時、店内はサメでデコレーションされているのではと思ったが、中に入ると、こじんまりとした普通のバーだった。 いや、普通は間違いか。 ゲイを公言していない俺が酔いに任せて全てを曝け出す事の出来る店なのだから。 つまり、ゲイバーだ。 店長は美貌の貴公子として人気があり、彼目当ての客も多い。 店長の名前は秋吉丈(あきよし じょう)。 店名のジョーズはサメではなく、彼の名前が由来である。 普段の柔和な態度からは想像出来ないが、キレるとホオジロザメの如く凶暴で、兄も元ヤクザと言うから、実際に手を出すツワモノはいない。 その兄貴も今は『コルト』と言うカフェを経営しているが、びびりの俺は覗きに行った事がない。 それなのに、今夜の俺は…。 「『最強ブラザーズ』って名前で店出したらどうっすかぁ?」 カウンター席の真ん中に陣取って酒を啜り、すっかり出来上がってしまった俺の口から次々と禁句が漏れ出て来る。 左右に座っている常連客が引き攣っているのは分かっていたが、タガが外れた俺はまさに無敵。 だから止まらない。
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