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亮が慌ててそっちへ向かって言った。
「荒潟さん!
将平さんの隣へどうぞ!」
「え?」
荒潟がきょとんとして亮と俺を交互に見る。
俺はこの時、全てを悟った。
店長が当事者に内緒で俺と荒潟を引き合わせようと仕組んだのだ。
傷心の俺が余りに哀れだったからか?
気晴らしで友達でもない男と楽しめるのかと、俺は自問自答する。
だって俺は、ずっと健志だけだったから。
この5年の間によそ見をしなかったと言えば嘘になる。
でも俺は、どんなに仲良くなっても一線を超えはしなかった。
肉体関係は断固拒否し、貞操を貫いた。
今になって思う。
ああ、何て馬鹿なんだ。
俺の中で、何かが弾け飛んだ。
そして、大胆に声を掛けていた。
「荒潟さん!一緒に飲みましょう!」
荒潟は黙って俺の所までやって来ると、隣の席に腰を下ろした。
飲み始めてすぐに、互いの仕事の話しになった。
俺の方は、あっという間に説明を終えたが、荒潟は『何でも屋』。
話しは尽きない。
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