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「荒潟さん、代行散歩の他にどんな事をするんですか?」 「頼まれれば何でも。 引っ越し作業、家具の修理、造園、害虫駆除、配達、送迎、市場調査…。」 「本当に何でも、ですね。」 「出来る事だけだよ。 それに、資格が無いと駄目な仕事も引き受けない。 だから電化製品や車の修理はやらない。 塗装程度なら手伝いはするけどな。」 「へえ…。 大変そうですね…。」 すると、荒潟が白い歯を見せて笑った。 「いいや、楽しいよ。」 俺は自分の仕事を振り返る。 営業は嫌ではないが、楽しいとは思わない。 適職だと感じた事もなかった。 与えられた仕事だからやっている、それだけだ。 急に彼が羨ましくなる。 色々な仕事が出来るのは確かに面白そうだ。 でも俺は元々器用じゃないから、彼の真似をしても旨く行かないだろう。 そう考えた途端、全ての自信を失いそうになり、慌ててハイボールに口を付ける。
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