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洗面所付きのトイレはキッチンの隣にあった。 しかし、風呂が無い。 もしかして、銭湯通い?と思ったが、荒潟が裏口を指差して言う。 「風呂は外付け。」 外付け?…って、まさか、江戸時代並みの薪で湯を沸かす五右衛門風呂? 興味津々で裏口から出てみると、すぐ横に物置のような小屋が併設されていて、中にちゃんとしたバスタブと1畳ほどの広さの洗い場もあった。 物珍しくてキョロキョロしている俺に、背後に立っていた荒潟が言う。 「普通に湯も出るしシャワーもあるが、脱衣場が無いから裸になって外に出なきゃならないんだよ。」 冬は寒そうだな、と思っていると、荒潟が頭を掻きながら言った。 「ご近所から、ここで燻製作ってるのかって度々訊かれてさ。 風呂だって言えなくて、そっちに燻製用の箱を作ったよ。」 ハルニレの大木が立つ小さな裏庭に、ロッカーを少し低くしたようなアルミ製の箱が置かれている。 「釣って来た魚やチーズを燻製にして、近隣に配ってる。 将平さん、魚嫌いじゃないなら食ってみる?」 「はい!」 俺が頷くと荒潟はにっこり笑い、再び中へ促した。
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