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荒潟がご馳走してくれたのは、ニジマスとヤマベの燻製だった。
燻製は美味いし、変な家なのに居心地が良くて、勧められるままグラスに注がれたビールを飲む。
ハイドは俺の隣に陣取り、甘えた声でおこぼれを強請るが、食わせてやりたいのを我慢して無視を決め込む。
すると、荒潟が犬用のビーフジャーキーを俺にくれた。
ハイドが大喜びして俺の手からおやつを貰う。
その顔を見ていると、俺も嬉しくてニヤけてしまった。
可愛いなあ、と思いながらハイドの頭を撫でていた俺だが、ふと、もう一匹の存在を思い出す。
猫はどうした?
「荒潟さん、ジキルは?」
「どこかにいるよ。」
荒潟が視線を彷徨わせながら言う。
「用心深くて、滅多に人前に現れないんだ。」
「それって、俺がいるから?」
「うん…。」
彼はなぜか、困ったように口籠もった。
「猫の気まぐれ、なんて可愛いもんじゃないくらい変わってるんだ。
だから、ジキルの事は気にするな。」
ペットは飼い主に似るって言うもんな、などと考えていると、また荒潟にじっと見られた。
彼は人の心が読めるんじゃないかと少し焦ったが、それとは逆に、どんどん魅了される自分がいた。
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