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唐突に荒潟が言った。 「将平、1週間夏休み取ったんだろ? 俺の仕事手伝ってくれないか? バイト代出すし、飯も食わせてやるから。」 急に話しが変わってぽかんとする俺。 それを荒潟はどう受け取ったのか、勝手に説明を始めた。 「今日は陶芸市の搬入と店番を頼まれているんだ。 これから窯元さんの所に行って焼き物を会場に運ぶ。 10時から市場が始まって夕方6時で終了。 テントの撤去作業と片付けをやって、残った物を本人の店に届けたら晩飯。 家に帰って来るのは夜の11時くらいかな。 で、明日は庭木の剪定作業だから朝6時起きだ。」 俺は焦って言う。 「ちょっと待って下さい! 俺は何をやれば…?」 「陶芸の搬入、搬出と、店番。」 「み、店番? 俺、陶芸なんて全く分からないんだけど…?」 「心配ないよ。 将平は営業やってるんだろ? いつも通りに接客すれば問題ないから。」 いつも通り? 営業だからって、愛想良く接客出来ると思ってんの? ただニコニコして成り立つ仕事なんて無い。 清掃しか知らない俺に、陶芸作品を売るなんて簡単な事じゃないんだぞ! すると、荒潟が俺をじっと見て言った。 「いきなり頼んで置いて、売り上げに貢献しろ、なんて言わないよ。 会場は屋外にテントを設営しただけの青空市場で、俺が席を外した時にもう一人いてくれないと困るんだ。 俺もトイレを我慢するのは限界があるからな。」
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