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バーテンが明らかにびびった顔で俺に言った。
「す、すみません!」
それを聞いた途端、俺は我に返った。
「…あ、ごめん。
俺の方こそ大声出して…。」
急に罰が悪くなり、俺はここから退散しようと立ち上がった。
しかし足元が振らついて、椅子ごと後ろにひっくり返る。
「将平くん!」
店長の声が飛び、俺は自分がこけると確信したが、床に落ちる前に誰かの胸に保護された。
服の上からでも分かる厚い胸板だった。
俺は顔を上げて相手を見る。
東南アジア系の外国人に見えた。
長身で肌が浅黒く、半袖のTシャツから伸びた腕にもしっかりと筋肉が付いている。
マッチョとまでは行かないが、男から見ても(きっとノンケでも)格好良いと思える体付きだ。
顔は小さくて目鼻立ちがはっきりしている。
長く真っ直ぐな髪を後ろで束ね、やはり黒く光る瞳で俺をじっと見ていた。
その時、店長が言った。
「荒潟(あらがた)さん、将平くんをこっちまでお願いします!」
…荒潟?日本人か。
すると彼は俺をひょいと肩に担ぎ上げ、店長に言われるまま、奥の事務所へと運ぶ。
俺は恥ずかしかったが、頭が下がったせいか目が回り出して、抵抗するより身を任せた。
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