3.

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しかし、俺が拗ねるより先に今度は大爆笑された。 何事かと固まる俺に、彼はテーブルの上を指差して言う。 「ピラミッドに積む奴、初めて見た!」 俺は同じ形のカップや皿は纏めた方が良いと思って山型に重ねたのだが、それが荒潟のツボに嵌まったらしい。 そして、 「おまえ、変わってんな。」 と耳元で囁かれた。 まさか、変わり者の張本人に言われるなんて…。 俺はもう開き直り、ピラミッド型の陳列を貫いた。 荒潟はニヤニヤするだけで、やり直せとは言わなかった。 日曜のせいか、市場は多くの人で賑わいを見せ、こんな端の出店まで足を運んで陶器を買って行く客も想像以上にいた。 荒潟は電卓を使って会計を行い、俺は客が購入した食器や花瓶を新聞紙に包んで袋に入れる。 たまに値切って来る客もいて、そんな時は荒潟に声を掛ける。 すると彼はすぐに飛んで来て、他の食器と抱き合わせで値段を付けて売ってしまうのだ。 作品には大まかな値段が設定されているようだが、どう見ても荒潟が勝手に決めているとしか思えない。 こんな売り方をして、陶芸家さんは怒らないんだろうか? 俺が気を揉む中、彼は楽しそうに客と会話し、暇を持て余している出店の店主達もそこに加わって、いつの間にか人の輪が出来ていた。 陶器は飛ぶように売れ、正午過ぎには搬入物の4分の1が残るだけになっていた。
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