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「古株って…?
将平、まだ23だろ?」
「俺、中卒で今の会社に入ったから。
高校通いながら働いて、勤続8年になるんだ。」
荒潟が、今まで見た事のない顔をした。
相当驚いたらしく、目が丸くなっている。
俺は何か言わなきゃと焦ってしまい、余計な事まで口走ってしまった。
「ちょうど自活しようと考えていた頃に、施設長の勧めで葵社長の会社に入社したんだ。
最初はキツかったけど、高校も卒業出来たし、感謝してる…。」
「施設って?」
荒潟に尋ねられ、俺は、しまった、と思った。
よほど気心の知れた相手で無ければ、自分の生い立ちなど話さないのに。
すっかり気が緩んでいる自分に呆れたが、嘘をつくのも嫌だから正直に答えた。
「俺、親がいないんだ。
物心ついた時には養護施設にいて、そこで育った。」
こんな話しを聞けば、誰でも態度が変わる。
馬鹿にする奴もいれば、可哀想だと憐れむ奴もいる。
仕方ないが、俺はそれが悲しい。
相手に悪気がないのは分かってる。
でも俺は、特別な事だと思って欲しくなかった。
普通じゃないと思われるのは性的指向だけでたくさんだ。
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