23.

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まずい状況だ。 俺は営業車のハンドルに突っ伏し、答えが見つからないまま悩み続ける。 頭から離れないのは昨晩の出来事だった。 夢ではない。 恵巳は確かに俺にキスしたのだ。 しかし、どう考えても彼が俺に欲情するとは思えなかった。 ギュンのようにセックスに奔放な男が同性を相手にする事は稀にあるが、そこに恋愛感情はない。 興味本位か、或いは快楽主義か、だ。 恵巳は間違いなくストレートでゲイではないし、女の子のファンも大勢いる。 だから、性的欲求を溜め込んでいるとも思えない。 デートとなると面倒臭いらしいが、その気になればセックスまで持ち込める相手はいくらでもいるのだ。 それなのに、どうして俺にキスしたんだろう? 欲求不満の捌け口ならキスだけでは済まないはずだし、俺は男だ。 バンド仲間のギュンの乗りに感化され、ゲームで競うように先にゲイセックスを試そうとしたのか? でも、それもおかしい気がした。 俺が思うに、恵巳は粗暴なようで繊細だ。 例え遊びの延長でも、キスから始めるなんて…。 始める? って事は、この先もあるのか? 俺は慌てて考えるのをやめた。 解決策が浮かぶ所か、とんでもない状況に陥っているとしか思えなくなったからだ。
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