3.

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荒潟が風呂から出て来ると、忽ちハイドがダイニングテーブルの下から這い出して主人に甘えた。 「くっ付くな! せっかく風呂に入ったのに毛だらけになるだろ!」 怒られても纏わり付く大型犬に音を上げ、彼は 「こいつ、どうしたんだ?」 と俺に尋ねた。 「ジキルにイジメられたんだよ。」 笑って答える俺に、荒潟は、ふうん、と呟き、そのまま考え込んでしまった。 荒潟が何を考えているのか知りたかったのもあるが、腰にタオル1枚巻いただけの格好をもっと見ていたいのもあり、俺は会話を促した。 「ジキルって綺麗な猫だね。 真っ白で、目もガラス玉みたいだ。」 「そうか…。」 ん?そうか、って変な返事だな。 俺が首を傾げると、荒潟は頭を掻きながら言った。 「実は、見た事がないんだ。」 「は?」 「ジキルはいつの間にか居ついた猫で、足音や声は何度も聞いているんだが、実際には姿を見ていないんだよ。 泊りに来た友人のうち何人かが目撃しているんだが、俺には気配だけだ。 餌や水を置いても無視するし、マタタビで誘き寄せようとしても駄目だった。 普段はどこに居るのか、どこからこの家に出入りしているのか、全く分からん。」
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