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気が付くと、事務所のソファーの上だった。
体にはタオルケットが掛かっている。
…やばい。どのくらい寝たんだろう。
俺が起き上がるのと同時に事務所のドアが開き、店長が顔を出す。
俺と目が合い、彼はパソコンの乗った机やダンボール箱に埋め尽くされた棚の間を擦り抜けて、一番奥の壁際に置かれたソファーまでやって来て言った。
「将平くん、大丈夫か?」
酔いは残っていたが、頭はぐらぐらしなかった。
それで、うん、と頷くと、彼は俺の肩をぽんと叩き、
「俺も帰るから、アパートまで送るよ。」
と言う。
俺は慌てた。
閉店時間まで爆睡していたのか?
じゃ、今何時?
スマホを探す俺を止め、店長が言った。
「まだ日付変わってないよ。
今日は亮(りょう)にラストまで頼んであるから、一緒に帰ろう。」
そして、微笑を浮かべて俺の腕を見る。
「将平くんは相変わらず腕時計をしないんだね。」
「うん…。」
俺は苦笑いで答える。
営業の仕事に変わったと言うのに、時間はスマホのデジタル表示で確認していた。
もうそれが癖になっていて、プライベートでも貴金属さえ身に付けない。
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