3.

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嘘みたいな話しに俺は目を瞬かせる。 しかし、荒潟は真剣な顔で俺に近付いて言う。 「俺もジキルを見てみたい。 あいつが現れたら、捕まえてくれないか?」 「ええっ? む、無理だよ! 神出鬼没だし、逃げ足速いし…。」 「大丈夫! ジキルがそこまでちゃんと姿を見せるなんて、おまえの前だけだ。 あいつを手懐けて籠に入れてくれ。」 荒潟は籠を探してあちこち歩き回る。 しかし見つからないらしく、結局、運んで来たのはゴミ箱だった。 「周りに空気穴を開けておくから、おまえはこれをジキルに被せて捕まえる。」 「強引だな。 でも、とにかく先に…。」 俺は目のやり場に困りながら呟く。 「パンツ穿いて。」 荒潟の腰に巻いていたタオルは、もうとっくに落っこちていた。 裸は気にしない素振りの彼も、俺が照れるせいか急に前を隠して服を取りに行った。 俺も風呂を使わせて貰い、家に戻ると主の姿はない。 俺は落ち着いて体を拭き、彼が用意してくれたTシャツとショートパンツを身に着けた。 俺には大きくて、肩は合っていないしズボンも7分丈になってしまった。 明日は自分のアパートに帰って服を取りに行こう、などと考えながら階段を上る。 そしてふと気付く。 …俺、今日は一度も健志の事を思い出さなかったな。
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