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翌朝は6時に起き、荒潟の作ってくれた朝食を食べて、慌ただしく車で現場に向かった。
運転しながら、荒潟が俺に説明する。
「依頼主は貸しコテージのオーナーの三郷(さんごう)さん。
契約している造園業者に欠員が出て、全部回りきれなくなったらしいんだ。
それで1戸分だけ、俺が剪定をする事になった。
ここから1時間以上かかる山間の別荘地だし、正午までに作業を終えなきゃならないしで、ちょっと面倒なんだよなあ。」
「剪定って、数時間で終わるの?」
俺は経験が無いから見当も着かない。
すると、荒潟が横目で見て呟いた。
「将平の働き次第かな?」
サイズの合わないブカブカの作業用繋ぎを着こみ、軍手を握り締めて助手席に座っている俺。
どう見ても、遊び半分で付いて来た親戚の子供のようだ。
この居心地悪さは、自分が何をすればいいのか分からないせいもある。
それなのに荒潟は、肝心な所を話してくれない。
案の定、着いた先では、出迎えてくれた三郷さんから挨拶もそこそこにこう言われた。
「将平くん、学校はもう休みかい?」
俺は社会人だと答えようとしたのに、なぜか荒潟が止めて適当に誤魔化してしまった。
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