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裏庭に向かって歩きながら、俺は荒潟に文句を言った。
「三郷さん、俺のこと学生だと思ってるんだぞ!」
「何か困るか?」
「だって俺、23で会社勤めだし…。」
「今日は俺が頼んだ臨時のバイトだろ?
おまえの会社も年齢も関係無いよ。」
「でもあの人、誤解してるから…。」
言いながら、俺の声は自然と小さくなる。
…俺が間違ってるのかな?
すると、荒潟が立ち止まって言った。
「俺は正直なおまえが好きだよ。
でも、あのおっさんはおまえの会社の客じゃないんだ。
これが最初で最後の対面かもしれないんだから、個人情報は曖昧にして置けばいいんだよ。」
「そうだよな…。ごめん。」
俺は反省しきりで口籠もる。
「嘘吐いたら、後で荒潟さんにクレームが来るんじゃないかと心配になったんだ。」
荒潟は俺の肩をぽんと叩き、白い歯を見せて言う。
「将平を仕事に付き合わせたのは、楽しく作業出来るって分かってるからだ。
おまえも俺を信じて楽しめ。」
それを聞いて、俺は思った。
ああ、この人はやっぱり変わってる。
仕事=楽しむもの、なんだ…。
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