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俺達は昼まで庭木の剪定作業に没頭した。
枝を払うのは勿論、荒潟。
庭木は松や白樺、桜の大木があり、彼は2メートル近くある脚立に上って、業務用の大きな刈り込み鋏で枝を豪快に切り落として行く。
俺の仕事は、落ちた枝の片付けと芝刈り。
慣れない芝刈り機に戸惑いつつ作業に没頭していると、脚立の下にはどんどん枝葉が溜まる。
俺は度々機械を止め、荒潟の所まで戻って落ちた枝を束ね、葉をゴミ袋に詰め込んだ。
「痛っ!」
突然、俺の手に痛みが走る。
軍手を突き破り、枝先が掌に刺さってしまったのだ。
「大丈夫か?」
荒潟が手を止め、脚立から俺を見下ろして言った。
俺は、大丈夫、と返事をし、急いで軍手を嵌め直す。
本当は血が出ていたが、荒潟に役立たずと思われるのが嫌だった。
傷を隠して芝刈り作業に戻ろうとしたその時、荒潟が脚立から飛び降り、俺の腕を掴んで言った。
「将平、手見せてみろ。」
俺は渋々軍手を脱ぐ。
荒潟は掌に出来た傷を見て、おもむろに俺の腕をぐいっと引っ張ると、コテージに向かって歩いて行く。
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