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「…俺、やっぱ不器用だよな。」
俺が呟くのと同時に信号が赤になり、荒潟がブレーキを踏む。
そして、こっちを見て言った。
「だから一生懸命やるんだろ?
俺はおまえのそう言う所が好きだよ。」
「でも、仕事は器用な人間とやる方が…。」
「俺はそうは思わない。」
荒潟がきっぱり言う。
「信用出来る奴じゃなきゃ、一緒に仕事しないよ。」
俺は驚いて彼を見る。
信号が青になり、荒潟は前を向いて運転を再開した。
俺はこの時、彼が会社勤めをしない理由が少しだけ分かった気がした。
荒潟は、このまま家に帰ると告げた。
本当はスーパー銭湯で汗を流したかったらしいが、俺の怪我を気遣い、家の風呂に入ろうと言ってくれた。
彼に感謝しつつ、俺は図々しいお願いをした。
「面倒じゃなければ、俺のアパートに寄ってくれると有りがたいんだけど…。」
「いいよ。」
荒潟は当然のように返事をし、俺のアパートへ車を走らせた。
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