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部屋に入った俺は、ゴミ袋に入れたまま放置されている健志の私物を見ないようにしながら、自分の着替えをバッグに詰める。
その間、荒潟は狭い部屋の中をぐるぐる歩き回り、時々立ち止まっては顎に手を当てて考えて込んでいた。
用意を終えた俺の耳に、彼の呟きが聞こえた。
「想像と違ったな…。」
「え?何が?」
「この部屋だよ。
おまえの事だから、もっと拘りのある家具とか雑貨が置いてあると思ったのに、最低限の物しかない。」
俺は苦笑して答える。
「俺って、そんな人間じゃないよ。
人にも物にも執着が無いんだ。」
「カレ氏以外?」
荒潟の言葉に、俺はドキッとする。
目を逸らしたいのに、彼は意地悪く俺の視線を追い駆けて言う。
「そいつに執着し過ぎて、他はどうでも良くなったのか?」
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