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俺は荒潟にしがみ付いていた。
そして強引に手から袋を奪い、胸に抱きかかえてしゃがみ込む。
すると、彼がぽつりと言った。
「車の中を整理して来る。
10分で戻るよ。」
荒潟が部屋から出て行った途端、俺は力が抜けて蹲る。
胸が苦しい。
まだ遣り切れない想いが残っていて、今にも溢れ出てしまいそうだ。
服は健志の匂いがして、一緒に買ったアクセサリーやCDには俺達の思い出が詰まっている。
情けなかったが、どんなに頑張っても平気ではいられない。
俺は何度も、拳で涙を拭った。
荒潟が戻って来たのは30分以上経ってからだった。
俺はまだ悲しかったが、涙は止まって気持ちも落ち着きを取り戻していた。
涙と鼻水で汚れたティッシュもゴミ袋に詰め込み、それを荒潟に突き出して言う。
「捨ててくれ。」
「ああ。」
荒潟はにっこり笑い、片手にゴミ袋を持つと、もう片手を俺に差し出す。
俺はその手を掴んで立ち上がり、彼の後に付いて部屋を出た。
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