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「ああ、そうだよな。
じゃ、いつゲイだと気付いたんだ?」
荒潟は無邪気に訊いて来る。
面と向かってこんな質問をされるのは初めてだが、今更驚かなくなっていた。
ただ、体を洗って貰いながらする話しにしては微妙だが…。
「中学に入ったばかりの頃だったかな…。
俺は施設で一緒だった兄ちゃんが大好きで、女の子にはそんな気持ちにならない自分がおかしいと思ってた。
で、その兄ちゃんが独り立ちして施設から出て行く事になった時、悲し過ぎて熱まで出しちゃったんだよ。
あの時、自分がゲイだと気付いたんだ。
周りのみんなは俺の事をガキだと言ってからかい、当の兄ちゃんは、弟分の俺が寂しがってると思って慰めてくれたけど、本当は彼に恋していたんだ。」
いつも質問ばかりする荒潟に、今度は俺が訊いてみた。
「荒潟さんの初恋はいつ?」
「初恋?」
荒潟がシャワーを止め、ぽつりと答えた。
「覚えてないな…。」
唐突に会話が終わり、荒潟が湯船に浸かる。
俺はシャワーを浴びたから、このまま出ようと扉に手を掛けた。
すると、荒潟が大きな声で言った。
「将平!おまえも入れ!」
「え?狭くて無理だよ。」
「大丈夫だって!」
命令口調の荒潟を拒否出来ず、俺は戻って浴槽に片足を入れる。
が、狭い。
だから無理だと言ったのに、と思った瞬間、荒潟が俺の腰を抱いて自分の膝の上に座らせた。
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