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俺は柵から身を乗り出し、大声で言う。
「グラタンじゃなくて良いよ!
カップ麺でも何でも…。」
「バカ野郎!」
突然、荒潟に怒鳴られた。
俺は何が彼の逆鱗に触れたか分からず、ぽかんとする。
料理上手な相手にインスタントラーメンでいいと言ったのが悪かったのか?
或いは、カップラーメンにアレルギーでも…?
それにしても様子が変だ。
怒っている割に貧血でも起こしているみたいに顔が青い。
荒潟が急に勢いを無くして言った。
「将平…。
柵から離れろ。」
「え?もしかして、この柵壊れてんの?」
「いや。でもおまえは度々そうやって身を乗り出すだろ?
いつか落っこちるかもしれないと思うと…。
とにかく、頼むから離れてくれ。」
俺は漸くぴんと来た。
荒潟は多分…。
「荒潟さん、高所恐怖症?」
図星だ。
彼は誤魔化そうとしたが、顔に書いてある。
荒潟が観念してぼそぼそと言った。
「恐怖症まで行かないが、高い所は得意じゃない。
特に、自分より他人が危険行為をしているのを見ると心臓が凍る。
…だから、早く下りて来い。」
スウェットのズボンしか穿いていなかった俺は、彼の機嫌を損ねないように急いで上着を頭から被り、階段を下りた。
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