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俺は唇を噛み締めて下を向く。
すると、店長が肩を抱いて言った。
「届いたけど、出席は出来ないな。
将平くんをこんなに悲しませる酷い奴だと分かったから。」
俺はもう我慢出来なくて、ガキみたいに彼の胸で泣いた。
森健志(もり たけし)と出会ったのは16の時だ。
会った瞬間から好きになり、何とか仲良くなったものの恋心を抱いているなんて言えなくて、それから親友を貫き通した。
健志は同い年だが、定時制高校に通う俺と違って昼間の有名進学校に通っていたし、迷惑な存在にだけはなりたくなかったのだ。
18まで我慢して、やっと好きだと告白した。
ゲイだと分かって嫌われても、共通の友人達に知れ渡って疎外されても、俺は耐えるつもりだった。
ところが、健志は俺を受け入れてくれた。
そればかりか、彼は自分もゲイだと俺にカミングアウトしたのだ。
夢が叶って、俺は天にも昇る気持ちだった。
多分、あれが俺の人生で最高に幸せな記憶となるだろう。
だって俺は、それから5年間も騙され続け、挙げ句に捨てられたんだから。
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