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朝食後、俺達は昨日の仕事の続きをしに車でコテージへ向かった。 天気は快晴で荒潟も上機嫌。 運転席側の窓を全開にし、鼻歌を歌いながらハンドルを握る。 「将平、正午までに仕事を終わらせて、午後はどこかで美味い昼飯食ってから遊ぼうな。」 「うん…。」 よく分からないまま頷いたが、荒潟の方は楽しそうに再び歌を口ずさんだ。 俺は営業職に就いてから、以前にも増して神経質になったと思う。 遅刻は会社の信用に関わるから許されないし、1日の予定もちゃんと組まないと、ぽっかり時間が空いたり、逆に詰まって取引先に迷惑を掛けたりする。 現場で働いていた時は、清掃技術を屈指して、いかに早く隅々まで綺麗に出来るかが勝負だった。 人が往来する中での清掃は事故が起きないように特に注意が必要で緊張感があったが、営業はそれとは別の気遣いが重要だと知り、俺は最初、かなり苦労した。 言葉の裏を読んで根回ししたり、報酬の損得勘定をしながら愛想良く振る舞ったり。 だから『次に何をするか』を把握していないと不安になるし、況してや遊ぶ事を先に考えて仕事をするなんてあり得なかった。 …なのに、今は成り行き任せに荒潟と過ごしている。
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