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荒潟は詳しい説明をしない。
そして勝手に俺を連れ回す。
俺も文句を言えばいいのだが、怒る所か楽しくてしょうがない。
この後、何が起きるんだろう?
まるで子供の頃の夏休みみたいに、俺はワクワクしていた。
昨日のコテージに着き、俺達は残りの剪定をせっせと行う。
俺も要領を得て荒潟のサポートに徹していたのだが、度々邪魔が入るのだ。
「将平くん、傷はもういいの?」
「将平くん、アイスコーヒー飲むかい?」
「将平くん、ネットで取り寄せたパウンドケーキがあるんだけど、食べない?」
オーナーの三郷さんが15分置きに休憩させるから、仕事が遅々として進まない。
しかし荒潟は怒りもせず、炎天下の中、本当は苦手な脚立に跨り、黙々と仕事をこなして行く。
俺が急いで彼の元に戻ると、先に謝られてしまった。
「悪いな、将平。
あの人に付き合わせちゃって。」
「いや、俺の方こそ仕事さぼってゴメン。」
「違うんだよ。」
荒潟が、ちょっと済まなさそうに言う。
「初日に『オーナーがおまえの事を気に入ると思って連れて来た。』って言っただろ?
あの人、ゲイなんだ。」
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