5.

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夏の日差しが降り注ぐ中、荒潟の運転で海に向かう。 今日はハイドも一緒だ。 俺は助手席に座り、甘えたがりのハスキー犬が後部座席から顔を出して鼻を鳴らす度に頭を撫でてやったり、運転手におにぎりや飲み物を渡したりと忙しい。 こうしていると、本当に荒潟のカノ女になった気がする。 横目でちらっと彼を見ると、相変わらず楽しげだ。 俺にはまだ荒潟の事が良く分からない。 彼の破天荒振りは充分に体感したが、実の所、何を考えているのだろう? 荒潟は俺に自分の過去を語った事がない。 どんな子供だったのか、どうして今の生活に行き着いたのか? 蔵に住んでいる理由も、ハイドを飼う事になった切っ掛けも話してくれない。 訊けば答えてくれるだろうが、そこに彼の気持ちは見えない気がした。 荒潟の笑顔に誰もが魅了される。 でも、それはきっと、彼のほんの一部だ。 俺は思う。 荒潟はどんな風に怒るんだろう? 悲しい時は、どうやって泣くんだろう? 苦しい時、切ない時は、誰に助けを求めるのか? そして、俺は溜め息をつく。 もう認めざるを得ない。 俺は彼に恋してる。 彼が誰にも見せない顔を、自分だけが知りたいと思ってる。
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