5.

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健志に振られ、人生のどん底だと嘆いていたのが嘘のようだ。 自分が簡単に他の男に気持ちが移るなんて信じられないが、実はこんなに単純な人間だったのかと思うと、気が楽になって笑えて来た。 不意に荒潟が言う。 「溜め息ついたり笑ったり、気味悪いな。」 「あはは、ごめん。」 俺は益々おかしくなって笑い続ける。 「変わり者同士って言うのも、楽しめるなあと思ってさ。」 すると、荒潟が穏やかな笑みを浮かべて言った。 「人生は一度きりだ。 楽しんだ者勝ちだよ、将平。」 俺は答えなかったが、彼となら博打を打つような真似をしても良いな、と思った。 目的地に到着するまでに片道2時間掛かり、もう夕方だ。 その海岸は整備された海水浴場でも無ければキャンプ場でも無かった。 ごつごつした岩場にちょっとした乾いた砂浜があるだけで、テントは張れるが大丈夫なのだろうか…? 俺の不安を感じ取ったのか、車から荷物を運び出していた荒潟が言う。 「ここは満潮時も波が来ないから心配ないよ。 密漁の監視で漁師が見回りに来ると思うけど、大抵顔見知りだし、後始末さえすればハイドが一緒でも文句言われないからな。」 今、ハイドはリードも付けずに海岸を駆け回っている。 一般の海水浴場では大型犬は野放しに出来ない。 はしゃいでいるハイドを見ると、俺もここで良かったな、と思う。
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