5.

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子供心にも、その不安があったのだろうか? 俺は一度だけ、施設長である仙波(せんば)さんに尋ねた事がある。 『母ちゃん先生、僕、ツツミなの? ツツウミなの?』 『あなたはツツウミ ショウヘイくんよ。』 『変なの…。』 『どうして?』 『だって、お父さんもお母さんもいないのに、変だよね?』 『…。』 『なんで筒海将平じゃなきゃダメなの? 僕、母ちゃん先生と同じ仙波将平がいいな。』 『いいえ、あなたは筒海将平くんよ。』 施設長は優しく俺の頭を撫でてくれたが、俺はそれから彼女を『母ちゃん先生』ではなく、『仙波先生』と呼ぶようになった。 「将平。」 揺り動かされ、俺は飛び起きた。 助手席で居眠りしていたらしい。 雨は止み、フロントガラスから朝日が差し込んでいる。 目を細める俺に、荒潟が白い歯を見せて言った。 「見ろよ。綺麗だろ?」 山の谷間から昇る太陽。 空の彼方はまだ暗いが、連なる山頂は金色に輝いている。 「綺麗だね…。」 俺は言い、早朝の空気を取り込もうと、助手席の窓を開けて思い切り息を吸い込んだ。
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