1495人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
今度は石鹸を流さなきゃ、と溜め息をつく俺の耳に、
「ニャ~。」
と声が聞こえた。
「え?ジキル?」
「ニャア。」
「どこだ?」
「ニャア。」
声は風呂のドアのすぐ向こうだ。
俺が急いでドアを開けると、するりと猫が入って来た。
「おまえ、猫のくせに風呂が好きなの?」
ジキルは振り返り、
「ニャア。」
と言って浴槽の縁に飛び乗る。
空かさずハイドがやって来て嬉しそうに鼻を突き出すと、ジキルは容赦無く前足で叩いた。
ハイドは忽ち顔を引っ込めたが、爪で引っ掻かれてはいないようで、傷は無かった。
俺はシャワーを出しながらジキルに言う。
「ハイドの事が嫌いなのか?」
「ニャア。」
「好きなの?」
「ニャア。」
返事だけはするが、意味は分からない。
ふと見ると、ハイドが大人しくなっていた。
ジキルの視線を気にしながら、タイルの床にお座りしている。
俺がシャワーを掛けても、彼はじっと耐えていた。
そして風呂場のドアを開けた途端、一目散に外に駆け出して、裏庭でブルブル体を振り、雫を飛ばす。
最初のコメントを投稿しよう!