6.

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今度は石鹸を流さなきゃ、と溜め息をつく俺の耳に、 「ニャ~。」 と声が聞こえた。 「え?ジキル?」 「ニャア。」 「どこだ?」 「ニャア。」 声は風呂のドアのすぐ向こうだ。 俺が急いでドアを開けると、するりと猫が入って来た。 「おまえ、猫のくせに風呂が好きなの?」 ジキルは振り返り、 「ニャア。」 と言って浴槽の縁に飛び乗る。 空かさずハイドがやって来て嬉しそうに鼻を突き出すと、ジキルは容赦無く前足で叩いた。 ハイドは忽ち顔を引っ込めたが、爪で引っ掻かれてはいないようで、傷は無かった。 俺はシャワーを出しながらジキルに言う。 「ハイドの事が嫌いなのか?」 「ニャア。」 「好きなの?」 「ニャア。」 返事だけはするが、意味は分からない。 ふと見ると、ハイドが大人しくなっていた。 ジキルの視線を気にしながら、タイルの床にお座りしている。 俺がシャワーを掛けても、彼はじっと耐えていた。 そして風呂場のドアを開けた途端、一目散に外に駆け出して、裏庭でブルブル体を振り、雫を飛ばす。
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