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振り返ると、ジキルはまだ風呂の縁に座っていた。
俺は何げに聞いてみる。
「なあ、ジキル。
おまえ、荒潟は好き?」
ジキルは透き通った青い眼で俺をじっと見る。
そしてふわりと下に降り、俺の横を擦り抜けて外に出て行く。
俺はちょっとぼんやりしてから、もう一度シャワーを出してタイルに残った泡を流し始めた。
その時、突然ドアが開き、タオル1枚を腰に巻いた荒潟が中に入って来た。
「将平、俺達もシャワーを浴びよう。」
俺は、はっとして大声を上げる。
「荒潟さん!
ジキルと会わなかった?」
「え?」
「さっき、そこにジキルが…。」
「なにっ!」
荒潟が踵を返して外に飛び出す。
バタバタと駆け回る足音が聞こえていたが、その内静かになり、落胆した様子の荒潟が顔を出して言った。
「…どこにもいないぞ。」
腰に巻いたはずのタオルは落としたらしく、またも全裸だ。
怒っているような悲しいような表情を浮かべている荒潟は妙に滑稽で、俺は思わず吹き出した。
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