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荒潟は仏頂面で腕組みしてこっちを見ているが、俺の笑いは止まらない。
すると彼は俺からシャワーヘッドを奪い、冷水を頭から浴びせて来た。
「わあっ!やめろ!
それ水だから!」
「知ってるよ。」
荒潟は言い、容赦なく俺に水を掛け続ける。
俺は頭から足の先までびしょびしょ。
ハイドを洗ってやった時点で服はずぶ濡れ状態だが、それでも冷水は勘弁して欲しい。
散々逃げ回って壁際に追い詰められた所で、漸く荒潟がシャワーを止めた。
いつも優しいくせに、このしつこさは何だよ?と思って睨み付けると、彼は急に俺の濡れた髪を指で掻き上げ、
「やり過ぎた。ごめんな。」
と言った。
俺の脳裏に、ゲイ友のあの言葉が浮かぶ。
『…俺を女扱い…。』
荒潟も、女とするようなセックスをしたから、俺を女扱いするのかな?
俺は腕を伸ばし、荒潟を抱き締めた。
荒潟も躊躇わず俺を抱いてくれる。
俺は密かに願った。
彼が本当は優しい男ではありませんように。
俺に欲情して、自分の物にしようと悪巧みを企てていますように。
この1週間で俺を懐柔し、その後も軟禁生活を強要しようと考えているのなら、俺は喜んで従うだろう。
女になんかなれないのに、俺は妄想して心を躍らせる。
楽しくて、でも辛いから、俺はわざとふざけて荒潟にしがみついた。
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