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俺は、健志の恋人になった女より、2人の未来に嫉妬していた。
俺が喉から手が出るほど欲しいものを、これからあの2人は築き上げて行く。
それを見せ付けられて、友達などやってられない。
俺は強くないんだよ、健志。
5年も付き合ったのに、そんな事も分からないのか?
俺は、人にも物にも執着しない。
どれだけ切望しても夢でしかないなら、追い駆けたって無意味だからだ。
でも健志は、そんな俺に期待させた挙げ句、捨てたんだ。
俺は人間で、犬や猫じゃないんだぞ!
「ニャア。」
驚いて振り向くと、山になった服の陰からジキルが現れた。
「ジキル…。」
俺が呼ぶと、猫はするりと傍に来て、膝に飛び乗った。
そして、青い瞳でじっと見る。
「…泣いてないよ。」
俺は言ったが、ジキルはざらざらする舌で俺の頬を舐めた。
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