5人が本棚に入れています
本棚に追加
「押忍!」藤堂は自分に気合を入れ直し大きく深呼吸すると、カアッという咆哮と同時に前へ踏み込んだ!
泉の顔面へ渾身の右正拳突きだ。しかし泉はギリギリで頭を右へずらし、藤堂の右正拳の手首を左手で逆手に内側から捕えた。
藤堂は、自分の右手首を掴んでいる泉の左手を振り解こうと、右腕を引いたり振ったりするが、泉の握力は凄まじく、
全く外れない。「ワリぃね。俺の握力は三百キロあるんだ」泉が呟くと、藤堂は諦めて左拳を固める。
(離さないならそれでもいい。これをますます避けられなくなるからな!)
藤堂は更に踏み込み、左正拳突きを泉の顔面へ叩きこもうとした!
泉は今度は沈みながらギリギリで藤堂の左正拳をかわし、右手で内側から逆手に藤堂の左手首を捕え、
強く握り締めると空中へ跳んだ。
藤堂は身の危険を感じ、後ろへ下がろうとするが、自分の両手首を泉に掴まれているので、
どこへも逃げられない!泉はそのまま、右足の踵で藤堂の喉を、左足の踵で心臓を、同時に踏み潰した。
藤堂の胸骨のへし折れる音が辺りに響く。泉は地へ降り立つと、やっと藤堂の両手首を離した。
藤堂はそのまま崩れ落ち、仰向けに倒れる。口からは大量の血が噴きこぼれてきた。
どうやら折れた胸骨が肺と心臓に突き刺さったらしい。「おい、鬼頭!」黒崎が吠える。「へい!」「救急車を呼べ!」
「分かりやした!」鬼頭は携帯を取り出し、救急センターへ連絡する。
「もう助からんだろうが、うちの組員が重傷で運ばれる所を、表で監視している七竜会の奴等に見せんとな。
何の為に、こいつの命を犠牲にしたか判らん」「相変わらず非情な野郎だな。この戦闘マニアの変態が!」
「何を言う。藤堂は武人としてお前の様な者と闘って死ねるんだ。これ以上の幸せがどこにある!」
「富田。こいつは本気で言ってんだぜ。全く狂人だよな。ついてけねえよ」
「ふん。人殺しが何をぬかしてやがる。泉神円流は人を殺す為の業だろうが!」
「そん通りだ。俺は刑事じゃねえ。ただの人殺しだよ。おい黒崎。もういいだろ?富田、帰るぞ」
「あ、はい!」
「おい、ちょっと待ってくれ。今の技は何ていうんだ?わしも今のは初めて見たぞ」
「泉神円流奥義『巖砕』(がんさい)」泉はそう言うと、富田の持つ自分のスーツを持つ。
「この道着、もらうぜ。見物料だ」そう言いながら、泉は回廊へ出た。
最初のコメントを投稿しよう!